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書:井上 心結
『神様のカルテ』という小説は、主人公の内科医、栗原一止(くりはら いちと)が病院の内外で奮闘する物語です。
栗原は、日々「いのち」について問われる医療現場において、悩んだり迷ったりするときに、しばしば自身の名前の由来に思いを馳せます。今月は、栗原が自身の名前の由来を担当する患者に話した際、患者からかけられた言葉を掲載します。
正しいという言葉は一般に、「規範になっていること」や「間違っていないこと」という意味になります。しかし、このことは一つ間違えれば危険なこともあります。
私たち人間は自分の都合や気持ちばかりが先行していると、「正しい」ということが自分を基準にしていることに気づきません。すると立ち止まることなく、本当に大切なことを置き去りしてしまうことがあります。私たち人間の争いは、自分が「正しい」というところに立ったときに生まれます。だから、「私」を基準にした「正しい」というのは、危険がはらんでいるのです。
さて、卒業を控えた三年生の表情は、まだあどけなさが残っていた三年前とは異なり、逞しく、そして頼もしくなりました。立派になった彼女達ならきっと新天地でも活躍してくれると思います。
しかし心配なこともあります。即効性が神のように尊ばれる現代社会は、私たちに便利で快適な生活を提供する一方、立ち止まって考える時間を奪いました。“より早く、より快適に”という精神は時に、大切なことを見落としかねません。
「何が本当に大切なのか。人生の宿題のようなこの問いに答えは、「最初の場所」にあるかもしれない。」―是非、勇気を持って立ち止まって考えてみて下さい。
三年生の皆さん、卒業おめでとう。
3月
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